新⼊社員を迎える季節だった。
年を重ねるほどに、
期待と不安の⼊り混じった彼らの顔を⾒ると⾝が引き締まる。
初⼼、忘るべからず。
毎年⼊社式の⽇の昼ごはんは、
会社近くの和⾷店で新⼈たちと⼀緒に⾷べる。
⾃分の息⼦や娘と同じくらいの彼らとの会話は
とても楽しい。
目まぐるしくかわる時代。環境。社会。
彼らの価値観は⾃分にはないものだ。

店から会社への帰り道。
私は彼らから少し離れて歩きながら、
これから始まる彼らの社会⼈⼈⽣に、
そして会社の明るい未来に思いを馳せていた。
すると、新⼊社員の⼀⼈がふと私の⽅を振り返り、
⾛ってやってきた。
「どうした?」
「◎◎さん、⼀⼈だとさみしいかなと思って!」
変わるものはある。⾃分と彼らの価値観は違う。
でも、変わらないものもあるのだ。
相⼿の気持ちを⾔い当てることはできなくても、
慮ることはできる。
そしてそれは⼤抵の場合、
じんわりと⼈の⼼にしみわたっていくものなのだと思う。